シンガポールでの海外基礎配属を終えて ~Nanyang Technological University留学~
医学部3年 池森 恭花
私は7月10日から8月30日までの期間、Nanyang Technological Universityで勉強させていただきました。ラボで実験するために就労ビザを取る必要があり、加えて、大学に通うために必要な手続きもいくつかありました。手続きやメールのやり取りは全て英語だったため、四苦八苦しました。また、部屋探しは自分でするのですが、シンガポールでは短期で滞在すること自体が難しく、なかなか見つけることが出来ませんでした。
ラボで必要になる手技は事前に知らされました。必要な手技が基礎配属で習っている内容と異なる場合は、その手技を教えていただける先生を自分で探してお願いしに行くことになるのですが、私の場合は病理学教室で習っていた手技と重なるものが多く、また、足りなかった手技についても、出発までに一通り習えるよう中西先生がご配慮くださいました。
ラボで私が関わったプロジェクトは、HEK293T細胞を用いてZinc finger antiviral protein(ZAP)を主に構成するZAPS(small)とZAPL(large)の発現を調べることでした。研究は基本的には1週間1サイクルで進んでいきました。大まかな流れとしては、月曜日に細胞をプレートに撒き、火曜日にTransfection、木曜日にRNA抽出と逆転写、金曜日にReal-time PCRを行い、必要に応じてTransformationなども追加で行いました。HEK293T細胞をはじめ、実験で使うもののほとんどは自分専用のものを持ち、管理しなければならなかったのですが、そのような経験は基礎配属ではしたことがなかったので新鮮でした。
ラボに日本語を理解出来る人は1人もいませんでした。私を直接指導してくださったベトナムの方の英語は非常に聞きづらく、かつ、専門用語も使われるので、日常会話すらおぼつかない私は、コミュニケーションを取るのにとても苦労しました。ラボでは英語と中国語が飛び交っていましたが、複数の言語を話せることは全く特別なことではなく、言語は単なるツールでしかないということを痛感しました。英語が話せないというのは問題外でした。
私が部屋を借りたのは3歳と6歳の子どもがいる、インド人のご家庭でした。子どもがいる環境では気負わずに英語を話す練習ができるのではと思い、決め手になりました。このご家庭のお父さん、お母さんはとても親切で、私の健康を気遣ってインドの食べものなどを買ってきてくださることもよくありました。また、子どもたちと遊ぶ時間は楽しく、初めての海外生活、初めての一人暮らしの不安を和らげてくれました。
留学を通して特に強く感じたのは、知識としての英語ではなく、話せる英語の重要性でした。シンガポールでの海外基礎配属は、日本語が全く使えない点で大変ではありましたが、英語しか話せない環境に身を置くことができるので英会話の習得には最適だと思います。
最後に、私の配属を受け入れてくださったXavier教授、指導してくださったPhuong Thao,
ラボにコンタクトを取ってくださった改正先生、事務手続きをサポートしてくださった国際交流センターの林さん、そして、手技の指導をしてくださった病理学教室の中西先生、その他お世話になった皆さん、本当にありがとうございました。