病気の原因物質を有機化学へ応用
―認知症や糖尿病の原因となるアミロイドを活用して有機化合物を変換する方法を開発―
発表日 | 365体育app6年5月1日(水) |
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発表のポイント
- 温和な水系溶媒中、アミロイドに近接したアミノ基を他の構造へ変換する方法(CASL)を開発した。
- これまでは実現が難しかったアミノ基の基質選択的な変換が可能になった。
- 本研究は、医薬品合成法や生体内反応として重要なアミン修飾反応の適用性を拡大することが期待される。
発表内容
和歌山県立医科大学 薬学部 相馬 洋平 教授、澤崎 鷹 助教、佐々木 大輔 講師の研究グループは、認知症や糖尿病などの原因物質として知られているアミロイドを活用することにより、これまで実現が難しかった有機化合物の変換が可能になることを発見しました。
アミノ基の修飾反応は、医薬品合成法や生体内の代謝反応として重要な化学反応です。しかし、酸性?中性の温和な水系溶媒中ではアミノ基は不活性化されてしまうため修飾反応が進行しづらくなります。アミロイドは、ペプチドやタンパク質が凝集した線維状構造物であり、認知症や糖尿病などの原因になります。本研究では、アミノ基をアミロイドに近接することにより、たとえ酸性?中性の水系溶媒中であっても活性化することができ、その結果、アミノ基を他の様々な化学構造に変換できる触媒反応系「CASL」を開発しました。また、アミロイド触媒に存在するほとんどのアミド結合はアミロイドの形成に重要な役割を果たしていた一方、特定のアミドカルボニル酸素は基質アミンの活性化に寄与していることが明らかとなりました。さらに、同等の反応性を有するアミノ基が混在する条件下、CASLを利用することで、適切な基質に対してのみ選択的に反応が触媒されることを見いだしました。特に、アミノ基を多数持つタンパク質が共存する場合でもアミロイド触媒に結合性を有する基質の優先的な変換が進行したことから、CASLは生体分子共存下でも機能することが示されました。本成果は、医薬品などの物質生産や生体の恒常性維持のために重要なアミン修飾反応に関し、その適用性を拡大することが期待されます。
論文情報
雑誌名: Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
題 名: Catalysis driven by an amyloid-substrate complex
著者名: Taka Sawazaki*, Daisuke Sasaki, Youhei Sohma*
DOI: 10.1073/pnas.2314704121
URL: https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2314704121
研究助成
本研究は、科研費「基盤研究B(課題番号:JP21H02602)」、「研究活動スタート支援(課題番号:JP21K20727)」、「若手研究(課題番号:JP23K14325)」、「公益財団法人 中外創薬科学財団」、「公益財団法人アステラス病態代謝研究会」、「公益財団法人 篷庵社」の支援により実施されました。